家路に還るその日まで

【音屋369|いのちの歌 series】

「家路に還る、その日まで。」

遥か空は、ただ蒼く。
遥か海は、ただ碧く。

8月18日。

父の命日。
六回忌を迎えました。

今日の空は、

ただ、ただ、青かった。

そして、その空を映す海も、

ただ、ただ、青かった。

大切な人を見送ると、
人は「時」というものを、
それまでとは少し違う深さで感じるようになるのかもしれません。

父は、私が14歳のとき、
私たち家族のもとを離れました。

故郷を離れ、
その後、消息がわからなくなりました。

父がどこで、
どんな人生を歩んでいるのか。

私は知らないまま大人になりました。

それから37年。

私が51歳になった夏。

結婚し、新しい戸籍を届けたことで、
止まっていた何かの糸が、
再び結ばれたのでしょうか。

一通の知らせが届きました。

父の訃報でした。

そして私は、
長い長い時を越えて、

横浜・元町の霊安室で
父と再会しました。

14歳で別れた父と、
51歳になった娘。

生きている父に
「おかえり」と言うことはできませんでした。

それでも私は思いました。

帰りたいけど、戻れなかった父は、
最後に私のところへ還ってきたのだ。

それから5年。

今日、父の命日に、
この歌を贈ります。

ドヴォルザーク
交響曲第9番「新世界より」
第2楽章 Largo。

誰もが一度は耳にしたことのある
「家路」の旋律に、
私自身の言葉をのせました。

家路に還る、その日まで。

海に朝陽 照らされて
沈む夕陽 眺めれば
想い人の 月影に
心寄せる 故郷の

遥か空は ただ蒼く
遥か海は ただ碧く

月は紅く 灯されて
いつか帰る その笑顔
帰りたいけど 戻れない
いつか還る その胸に

遥か空は ただ蒼く
遥か海は ただ碧く

ただ、青く。

その日まで。

これは、父だけに贈る歌ではありません。

故郷へ帰りたくても、
帰ることのできなかった人へ。

大切な人を待ち続けた人へ。

離れて初めて、
故郷の温かさを知った人へ。

そして、大切な人を見送り、
それでも今日を生きている人へ。

人には、それぞれの「家路」がある。

帰る場所があり、
還っていく場所がある。

今日の青い空を見上げながら、
そんなことを思いました。

お父さん。

37年かかったけれど、

おかえり。

そして、ありがとう。

音屋369から、
「いのちの歌」を未来へ。

山中 aama 順子
Singer Song Photo Writer
aama inspiration

Piano|川勝陽一
Sound Produce|佐藤三樹夫
Soul Songs Labels

Original Music|Antonín Dvořák
Original Japanese Lyrics|Junko Yamanaka

音屋369|いのちの歌 series